2022年6月2日 |
新内の代表的な名曲です。現代の新内といえば森進一さんでしょうが、どこか背徳的な香りのする声であります。 本来の新内は浄瑠璃の一種で、この蘭蝶は全部演ずると数時間かかるほどです。物語は、現在では到底受け入れることのできない筋です。滅びゆく姿をただの3人で斯くも美しく描けるものかと感心するしかありません。 滅びゆく姿とを描いた音楽といえば、ワーグナーの巨大な建築物のようなニーベルゲンの指輪が有名ですが、よくこんな民族と軍事同盟を結んだなと思うくらい異質な美です。 江戸時代、高輪ゲートウェイ近くでの三角関係の話です。私たちはこの不可思議な社会の延長線上に生活しているのです。今更認定する必要も無いくらい黄昏ています。 太宰治の晩年の中にも出てきますので更に後押しされていますね。 部分抜粋 言わねばいとどせきかかる 胸の涙の遣る方なさ。 あの蘭蝶殿と夫婦の成り立ち話せば長い 高輪で一つ内に互いに出居衆 縁でこそあれ末かけて 約束かため身をかため世帯かためて落ち着いて アア嬉しやと思うたは 本に一日あらばこそ そりゃ誰故じゃ こなさん故 大事の男をそそなかし 夜昼となく引きつけられ 商売事はうわの空 ひいきで呼んでくださんす馴染みのお客茶屋衆も 来るたびごとにまた留守かと愛想つかされ 後後は呼んでくれても 内証の詰り詰って 私が身を売って渡したその金を またこなさんに入り上げられ 嬉しかろうかよかろうか 腹が立つやら悔しいやら 喰いつきたい程思うたは 今日まで日には幾度か その恨みを打ち捨てて 互いのための心底話 |